会長挨拶
ご挨拶 母乳を科学し、母乳育児をサイエンスから支援しよう!
第37回日本母乳哺育学会学術集会
会長 水野 克己
昭和大学医学部小児科学講座 教授
新型コロナウイルス感染症に本学会の学術集会も振り回された3年間でした。2020年は開催取りやめ、2021年はオンライン開催(会頭:早川有子先生)、2022年はハイブリッド開催(会頭:森内浩幸先生)となりましたが、両先生が工夫を凝らしてくださったおかげで、多くの方が参加され、活発な討議もなされました。
さて、2023年は現地開催といたします。ハイブリッド開催の利便性は理解しておりますが、4年ぶりに顔をあわせて、母乳のこと、母乳育児のことを多くの方々と語り合いたいと思っているからです。
この学術集会ではタイトルを「母乳を科学し、母乳育児をサイエンスから支援しよう!」と致しました。このタイトルには、日本における母乳研究を高めたいという願いを込めています。
まず、日本においては、これまでの母乳育児支援は、経験と伝承によるところが大きいと感じています。私たちが肌で感じてきたことを大切にする文化に、科学的な側面を加えていくことで、母児それぞれに必要な支援が行えると思います。ぜひ、会員の皆様には、日頃支援をなさっていて疑問に思われたことを、クリニカルクエスチョンとして研究するというマインドをお持ちいただきたいと思います。研究というと敷居が高いと感じるかもしれませんが、本学術集会では、研究マインドを実践できるためのシンポジウムを用意いたします。
次に、臨床面では、授乳中の薬剤処方は、頭を悩ませるところです。シンポジウムを通して、明日から授乳中の女性に薬剤処方をするとき、そして、薬を出されたが授乳はどうしたらよいか相談されたとき、自信をもってサポートできるようにします。
最後に、私のライフワークともいえる母乳バンクに関するシンポジウムを企画します。多くのNICU施設が母乳バンクを利用するようになり、ドナーミルクのエビデンスについても議論するよいタイミングかと考えます。また、人乳由来母乳強化物質の多施設共同研究(JASMINEトライアル)も結果を報告できることと思います。ドナーミルク利用にあたっては、レシピエントのお母様の気持ち、全体の母乳育児支援も併せて考える必要があります。
皆様とともに母乳研究を通して、お母様・赤ちゃんたちの笑顔に結び付ける機会となりますことを願って私のご挨拶といたします。